2009年6月9日火曜日

故郷喪失 - エートスな在処

佐伯啓思の「20世紀と何だったのか」を読んでいる。西欧近代から現代へ、そして西欧→アメリカ文明がいき着いたニヒリズム。ニヒリズム状態であることに気づかない究極のニヒリズム。などなど。と、そこでハイデガー。「現代の問題とはまさに故郷喪失である」という。その逆は「どこかに住まう場所を持っている」ということ。確かに、近代から現代の「技術主義」は存在の住処である実家を破壊してきた。我々は技術をただ道具としみなし、人が意のままに使うことで生活が便利になると考えてきた。ネット社会にいたり、人は更に家を、故郷を失い続ける。「存在の在処(ありか)は家である」とハイデガー。それは「親しくあること」ができ、「安らぐことのできるもの」だという。ギリシャ人はこれをエートスと言ったそうだ。「よい生き方」、「人々との社交」、「生活を律する価値や倫理」、これがただ一人の人間の個性ではなく、ひとつの集団のなかに現れてくるような精神の習慣だと。

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